今回は進学塾Rex清水谷教室の開校を記念して、桃山学院中学校高等学校校長・生田耕三先生と、清風中学校高等学校校長・平岡宏一先生に、進学塾Rex統括の山脇良一と立志館ゼミナール特別参与の中村俊一が、それぞれの学校の理念、学校運営において大切にされていること、学校の今、大学受験に向けて、そして志望される受験生のみなさんへのアドバイスを伺いました。大変興味深く、今後の進路選びの参考になるお話ですので、ぜひお読みください。
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―桃山学院高校の特徴をお教えください。
学校自体、時代と共に変わってきたと言われていますが、実は、本学の本質は変わっていません。桃山の建学の精神である「自由と愛」はずっと変わっていません。「自由と愛」という言葉がフィットする学校にしたいですし、実際、「自由と愛」がフィットしている学校だと私自身、そう思っています。たとえば、本校は制服が自由化されていますが、それこそまさに生徒の意見表明権、選択権を伝統的に認めて運営してきた証でもあります。生徒たちも自由に行動する権利を認められているからこそ、その背後にある「責任」に関しても理解してくれるのだと考えています。そして、もう一つ「愛」。これは他人のことを思いやることだと考えています。生徒同士だけでなく、教職員と生徒、教職員と保護者といった関係性を重視しているからこそ、本学に通ってくれる生徒たちが活き活きしていて、楽しそうに見えるのだと思います。これは桃山の伝統だと思っています。
―確かに桃山学院高校といえば、在学中の生徒さんだけでなく、OB・OGの方を含め、「明るい、楽しい」というイメージが浮かびます。
しかし、正直に言いますと、一昔前は、この「自由」というのが、私立高校としては、必ずしも受験生や保護者の方の共感を得られていなかったと感じています。ガチガチとした高校さんの方が進学の実績も向上されており、評価が高かったように思っています。ただ、本学としては、「自由と愛」を軸に、進学実績向上にも努めてきました。そうしているうちに、世の中的にも自主性や多様性が求められるようになり、本学の理念が徐々に時代に支持されるようになってきたように感じています。
―時代とマッチしてきているという話がありましたが、たくさんのお子さんを見られていて、ひと昔前のお子さんと今のお子さんに何か違いはありますか?
「概して」になりますが、今のお子さんは生活体験の幅が狭いように見受けます。そして、狭いがゆえに、成功体験が少ないお子さんが多いようですね。だからなのか、自信のなさが随所に見られます。学校としては、何でも良いので、自分が興味を持って、積極的に関わっていけるような子になってほしい、エネルギーをしっかりと発散させられるような子になってほしいと考えています。エネルギーの発散、それが勉強ならなおさら良いですが(笑)。ただ、一般的には成績の良い子は、それが成功体験、そして自信となっており、高校でも何にでも挑戦してくれる子が多いと感じます。もちろん勉強だけがすべてではありませんので、次へのステップを育んでいくためにも、一人ひとりの生徒のみなさんに高校生活でのいろいろな成功体験を得る機会を増やしてあげたいと考えています。
―生徒さんが挑戦するという意味で、桃山学院高校の中でオススメの行事はありますか?
全部です(笑)。文化祭や体育祭はもちろんのこと、最近はSDGsに関する行事も多くあるのですが、「リメイク活動」はおもしろいなと思っています。学校の中の老朽化している部分をみんなでリメイクしていこうという活動です。愛着も生まれとても良いと思っています。また、「桃山『学宿』」もすごいですよ。この行事は、教員は一切関与せず、OBと生徒で作り上げていく、とにかく「楽しもう」という合宿です。主体が完璧に生徒側にあり、楽しむためにする下準備が生徒を大いに成長させてくれます。その過程が社会に出た時に大いに役に立つと思っています。楽しむことそのものを目標にしているのですが、それに向けて、意見のぶつかり合いを経験するのは、とても良いコミュニケションを磨く場になっています。
―生田校長先生が、桃山学院高校で今後、力を入れていきたいと考えていらっしゃることはありますか?
引き続き国際コースの改革に取り組んでいきたいと考えています。現在、円高もあって留学費用が非常に高額となってきています。また、東南アジア諸国のレベルアップもあり、「留学=アメリカ・カナダ・オーストラリア」という図式が崩れているようにも感じます。さらには「国際コース=文系の生徒」という図式は、崩さないといけません。英語を道具にさまざまな国際交流ができる、そして、海外の大学への進学もできる、そんなコースを目指していきたいと考えています。
―大学進学に関して気にされている方も多いと感じます。桃山学院高校として、大学進学に向けて注力されていることを教えてください。
実は、「自由」の裏返しで、大学進学、特に現役生の進学に関しては、生徒さんや保護者の要望に必ずしも応え切れていないと思う時期もありました。そこで、10年、20年スパンで、大学入試に力を入れておられた他校経験のある教職員の採用にも力を入れました。そういう教職員から学ぶことは非常に多く、教員や生徒の日常の意識が向上したと感じています。本学は、先ほども申し上げた通り、生徒の意思を尊重しますので、受験に関しても無理やり誘導することがないのですが、日々のとりくみの結果として、現役の国公立大学の進学率が向上したのだと思っています。
また、2023年からは高2時から「S選抜コース」を設置しました。東大・京大・医学部(医学科)への進学を目標とするコースで、中高一貫、文理、英数、S英数の各コースの希望者から選抜されるコースとなります。「勉強で振り切りたい」という生徒を思いっきりサポートしてあげたいと思っています。
―最後となりますが、桃山学院高校を志望される中学生の方にアドバイスはありますか?
教科によって特性がありますので、一言ではなかなかまとめることは難しいですが、やはり「基礎・基本」を大切にしてほしいと思っています。応用問題も大事ですが、「基礎・基本」ができていないと応用問題は絶対にできません。また、単純な暗記でなく、本質が理解できているか、なぜそうなるのかを理解できているかが大切です。入試問題は、なかなか満点は取れませんが、得点しなければいけないところを見抜き、確実に得点できる力を養ってください。実際に受験する際は、過去問をしっかり取り組んでくださいね。
生田校長先生には気さくにさまざまなことをお話しいただきました。その中で「自由と愛」という言葉のもと、その背後にある「責任」の重要性を熟知された上で、学校運営に臨まれているのだと切に感じました。責任があるからこそ自由が認められる、いわば民主主義の根幹のような雰囲気を感じることができました。そして、「時代がマッチしてきた」と仰っていましたが、「多様性」が時代のキーワードなっている昨今、専願者・併願者ともに人気のある桃山学院高等学校の魅力が「自由と愛」という言葉に集約されているように感じました。さらには、生田校長先生からは、「生徒たちに成功体験を積ませたい」、「自分に自信を持って社会に巣立っていってほしい」という熱い思いを感じ、人間形成としての貴重な3年間を預かっているという「責任」を感じました。この度は、貴重なお時間どうもありがとうございました。
―清風高校の特徴をお教えください。
やっぱり男子校ということですかね(笑)。いろいろなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、男子校は、楽しくて楽しくて仕方がないんです、実際。私も男子校出身で実感していますが、これは男女別学の特徴で、異性の目を気にせず、いざというときに「むき出しの自分」を出せるんです。これは非常に魅力だと感じています。というのも、実は昨日まで高校2年生の修学旅行に帯同しておりまして、それこそ、生徒たちは「むき出しの自分」を出し合ってとても楽しんでいました。大人になった時、男子校出身で良かったときっと思ってもらえると思います。
―男女別学が少なくなってきている状況を踏まえると貴重な「場」だと感じます。では、その男子校の魅力を活かし、どのような人材育成を心がけていますか?
人は誰しも幸せになろうとして自分を高めようとします。自分を高めるやり方として、目先の損得だけを考えて自分を高めていくやり方と、他の人のお役に立とうとするために自分を高めていき、そして、それを「徳」として受け取っていこうとするやり方の2通りが存在します。私は後者の方が最終的に幸せになれると考えています。人間は社会的な動物なので、人のお役に立とうとすることによって得られるものこそが連帯感や共感、ひいては信頼を生むのではないかと考えています。ですので、学校としては、知識・知恵の習得はもちろんのこと、人のお役に立てる人材育成を心がけています。今、時代は混迷を極めています。また、情報化社会となり、その人がどのような人間かは、以前より赤裸々にわかる時代となりました。そのような時代で、人のお役に立てるように自分を高めていく生き方は羅針盤になると信じています。
―「混迷の時代」とありましたが、混迷の時代に清風高校として変わらずに伝えていきたいこと、逆に時代と共に変えていこうとされていることをお教えください。
このような時代だからこそ、自分を律していくことができる人間への指導を変えてはいけないと感じています。現在は、情報収集がSNS中心になってきています。テレビの時代よりも雑多に情報が流れ、正しい情報、正しくない情報、人を誘導するような情報が流れてきます。そのような中で自分を律していくことができなければ、不安になったり、路頭に迷ったりすることがあるかもしれません。ですので、本校では、自分を律するための教育として、「規律」を大切にしています。生活指導を軸に自分を律していくための「規律」を設けています。やがてそれが自分自身への規律や価値観の構築に繋がり、自分自身への信頼へと繋がっていくと信じています。
また、時代とともに変えているものは指導の仕方と生徒への距離感です。生徒への指導は、生徒の人格を尊重し、「納得感」が生まれるように指導するようにしています。頭ごなしに指導する時代は終わったと考えています。共感がないと人は動いてくれません。また、特にコロナ渦以降は、生徒との距離感を近くするように心がけています。というのも、コロナ渦以降、「コスパ」・「タイパ」という言葉をよく耳にするようになり、煩わしい人と人との関係を遠ざける傾向が目立ちました。しかし、教育である以上、人を育てるには距離を縮めなければならないと思っています。ですので、意識的に距離を縮めていくことによって、生徒に安心だ・安全だと思ってもらい、生徒自身がチャレンジしていけるような土壌を作っていきたいと考えています。
―最近の高校生をご覧になっていて、気になることはありますか?
やはり昔と比べるとチャレンジをしなくなったと感じています。しかし、生徒たちの本質的な積極性は失われていないようにも思います。というのも、コロナ渦で学校の活動が止まったり、制限されたりしました。しかし、コロナが落ち着いてから本校ではクラブ活動への加入率が80%を越えました。なんとコロナ禍以前よりクラブへの加入率がアップしたんです。生徒たちの「やりたい」という積極性は、本質的に存在し、それをどう引き出してあげるかが大切なんだと実感しました。ですので、本校は生徒たちへ「安心・安全」を提供し、「ここは自分がいていい場所なんだ」というふうに思ってもらいたいと考えています。「安心・安全」に向けては、先ほど述べた、納得感のある指導、生徒との距離感の再構築、あと、これは本校が長年大切にしてきたことですが、「即時・即日解決」を大切にしています。何か問題が起きた時は、保護者の方にもご協力をいただき、その日のうちに解決へ向けて取り組むようにしています。教育は接近戦だと思っています。それが生徒や保護者の皆さんとの強い信頼関係を生む土壌となるように思います。
―清風高校のオススメの行事があれば教えてください。
それはもう「100キロ歩行」です(笑)。本校から高野山までの100キロの道のりを1日半かけて昼夜歩きます。もちろんさまざまな行事はありますが、この行事で得られるものは計り知れないものがあります。一言で言うと「感動」です。やり遂げた後の達成感、仲間の大切さ、助け合いの精神、サポートしてくれる人の大切さ、いろいろなものが学べます。幸い保護者の方のご理解もあり、清風伝統の行事となっています。
―今後、力を入れていきたいと考えておられることはありますか?
今後、すごく大切になってくるのが「食育」だと私自身考えています。校舎を新設した際、食堂のメニューにはとても工夫をしました。お米は、自然栽培米を、味噌・オリーブオイルも自然栽培、玉ねぎ・人参は有機栽培のものを使用しています。中でもお米は「奇跡のリンゴ」で有名な木村式の自然栽培米を使用しています。もちろん育ち盛りの男の子ですので、ボリュームもきちんと考えています。これだけこだわると費用面で大変なんですが、生産者の方々のご理解・ご協力等を得て、低価格での提供を実現しています。私自身、数ヶ月前からグルテンフリーの生活をしており、とても調子が良くなりました。以前は肌トラブルもありましたが、改善されました。今後は学校教育の場で、より一層安心できる「食」の提供に力を入れていきたいと考えています。実は、保護者の方も食堂は利用できますので、清風高校に通われることになった際は、ぜひお越しください。
―毎年、国公立大学に多数の進学者を輩出されていますが、大学進学に向けて注力されていることを教えてください。
補習や講座の数には自信を持っています。今年の高校3年生は夏休みがなかったくらいです(笑)。また、伝統的に小論文の指導も行っており、きめ細かい指導のノウハウを持っています。さらに、休日勉強会として、自習室だけでなく、食堂も開放し、先生やOBが常駐して質問対応をできるようにしています。私は、受験は団体戦だと考えています。やる気は伝播します。生徒・先生・OBも含め、一体となって受験に向かえたらと思っています。
―では、最後となりますが、清風高校を志望される中学生の方にアドバイスはありますか?
たとえば、本校の数学の問題は最初にある問題が解けないと次へ進めないようになっています。大学入試でもみんなが正解する問題を間違えてしまう子は合格できません。逆に応用が多少できなくても、みんなができる問題を間違わずに解ける子は、合格する場合が多いです。難しいのは、みんなができる問題を確実に正解するには、面倒なことを面倒がらずにやれたかどうかだと思っています。Rex・立志館のカリキュラムは存じていますが、まさにそのカリキュラムに準拠してやってほしいと思いますね。また、面倒なことをやっているときに寄り添ってくれる先生がいることはとても心強いことだと思います。学力はいざという時の選択の幅を広げます。どの科目も基礎・基本を繰り返し取り組んでほしいと思います。
平岡校長先生は、ダライラマ14世が来日された際に通訳を務められるほど、仏教に精通されている方で、まるで法話を聞かせていただくような対談でした。「目先の損得を考えて自分の幸せを手にしようとする人は、他人の役に立つ喜びを知らない人だ」というお話が心に響きました。時代が変わっても、変わらない「本質」があります。学校教育として、大学進学に力を入れていることはもちろんのこと、男子校ならではの魅力、仏教に基づく情操教育に変わらないであろう「本質」を感じました。今後は、人と人との距離の近さが大切となってくるとの見解のもと、Rexの方針(学びたい!を育むどこよりも「近い」進学塾)をお褒めいただけたこと、非常に光栄でした。貴重なお時間ありがとうございました。